特別付録
宮島沼の植物の変遷
宮島沼の植物の変遷
         (水辺と水中の植物について)        
 原野の開拓は、人の手による自然環境の強制的変化作業でもある。かつては、美唄西部の殆どを占めていた湿性原野は、排水溝によって水を抜かれ乾いてしまった。
 河川の堤防造成、直線化工事や増田作業で、幾つもの沼が埋められていった。泥炭地には、大量の客土が行なわれて、畑となり更には水田に変貌してしまった。
 こうした物理的変化に加えて、耕地に施される除草剤や施肥の余剰分、流れ込む生活排水中の成分が、沼池の科学的環境変化を起こすことになった。
 沼地が消えると、そこに生育していた植物も命運をともする。ここに、数十年前の水生植物目録を掲げてみた。
 3・40間年の、地学的見地ではほんの一瞬に、美唄の沼地で起きた湿地や水生植物の変化が、見えてくるような気がしている。
1960年代の水生・水辺植物目録(宮島沼)
 タヌキモ科
タヌキモ   Utricularia australis

 ミツガシワ科
ミツガシワ   Menyanthes trifoliata

 セリ科
セリ   Oenanthe javanica
ドクゼリ   Cicuta virosa

 アリノトウグサ科
フサモ   Myriophyllum verticillaium
タチモ   Myriophyllum ussuriense

 ヒシ科
ヒシ   Trapa japonica
オニビシ   Trapa bispinosa vae.japonica
ヒメビシ   Trapa incisa

 ミゾハコベ科
ミゾハコベ   Elatine triandra

 オトギリソウ科
ミズオトギリ   Triadenum japonicum

 ミズハコベ科
ミズハコベ   Callitriche verna

 アブラナ科
オランダガラシ   Nasturtium officinale

 キンポウゲ科
バイカモ   Ranunculus nipponicum

 マツモ科
マツモ   Ceratophyllum demersum

 スイレン科
ジュンサイ   Brasenia schreberi
コウホネ   Nuphar japonicum
ネムロコウホネ   Nuphar pumilum
エゾノヒツジグサ   Nymphaea tetragona
                       var.tetragona

 アヤメ科
カキツバタ   Iris laevigata
キショウブ   Iris pseudacorus

 ミズアオイ科
ミズアオイ   Monochoria korsakowii

 ホシクサ科
クロイヌノヒゲ   Eriocaulon atrum
ヒロハイヌノヒゲ   Eriocaulon robustius

 ウキクサ科
ウキクサ   Spirodela polyrhiza

 サトイモ科
ショウブ   Acorus calamus
ミズハショウ   Lysichiton camtschatcense

 カヤツリグサ科
ゴウソ   Carax maximowiczii
オオカサスゲ   Carax rhynchophysa

 カヤツリグサ科
ウキヤガラ   Scirpus fluviatilis
カンガレイ   Scirpus triangulatus
サンカクイ   Scirpus triqueter
フトイ   Scirpus tabernaemontani
ホタルイ   Scirpus juncoides
マツバイ   Eleocharis acicularis
ミズガヤツリ   Cyperus serotinus

 イネ科
キタヨシ   pyragmites communis
マコモ   Zizania latifolia

 トチカガミ科
セキショウモ   Vallisneria natans
クロモ   Hyderilla verticillata

 オモダカ科
オモダカ   Sagittaria trifolia
アギナシ   Sagittaria aginashi
ヘラオモダカ   Alisma canaliculatum

 ヒルムシロ科
ヒルムシロ   Potamogeton distinctus
エビモ   Potamogeton crispus

 ミクリ科
ミクリ   Sparganium erectum

 ガマ科
ガマ   Typha latifolia

 トクサ科
ミズドクサ   Equisetum limosum
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消滅したもの
 水生植物の他、かつては美唄の沼辺に生息していた植物の幾つかで、見ることの叶わなくなったものを取り上げた。
ミツガシワ   Menyanthes trifoliata
   宝沼及び四十七士沼、湧沼や新関沼に多かったが、沼とともに消えた。
ジュンサイ   Brasenia schreberi
   かつては食用に摘み取るほどあった、手形沼、小川沼からも全く無くなった。
マツモ   Ceratophyllum demersum
   水中に育つ藻の仲間の姿が見えない。フサモタチモなどとも消滅したのだろ
 うか。トチカガミ科のクロモは健在であるが、かつて用水路溝に繁茂していた
 キチョウモを沼に探せなくなった。
ミズゴケ   Sphagnum palustre
   宮島沼の北側にあって、モウセンゴケやツルコケモモがその中を縫って生えてい
 た。湧沼周辺のも絶えた。宝沼近くの防風林床に残る。
モウセンゴケ   Drosera rothundifolia
ツルコケモモ   Vaccinium oxycoccus
ホロムイスゲ   Carex grandilimosa
   以上3種は、宝沼、湧沼、四十七士沼それに宮島沼でも最後を遂げた。美唄湿原
 のミズゴケ群中に、細々と残っているだけとなってしまった。
ホロムイツツジ   Chamaedaphne calyculata
   かつての美唄原野で、スズラン形の白い花をつけた別名ヤチツツギ。防風林に僅
   かな名残り株が生存。
イソツツジ   Ledum palustre diversipilosum
   両者、宝沼、湧沼及び宮島沼北側から消滅。美唄湿原に残る他、防風林に、残存
 株が僅かに生育。
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消滅寸前のもの
 例えばコウホネ、オオヒシクイや白鳥が逆立ちして、沼底の地下茎を引き上げる。食べ残しが水面に浮いて流れをいつか絶えていく。消え行く理由は何なのだろう。
タヌキモ   Utricularia australis
   宮島沼と手形沼には極小数、トラシップ沼に僅かに生育。
エゾノヒツジグサ   Nymphaea tetragona v.tetragona
   えっちゃん沼と湧沼では沼と運命をともにした。宮島沼では絶えていたが、かつ
 て生えていた手形沼側溝から採取した種子で、復活させたのが細々と生育。
コウホネ   Nuphar japonicum
   菱沼には多い。小川沼、天狗沼に生存。宮島沼では、ネムロコウホネ、
N.pumilumも含めて僅かに残る。
ミズドクサ   Equisetum limosum
   親子沼には多いが、宮島沼では南側水辺に少し存在するだけ。
カキツバタ   Iris laevigata
   湧沼に自生していたのを最後に、沼地からは姿が消えた。かつての湿性原野地で
 の防風林床に、僅かに残存するだけとなった。
ショウブ   Acorus calamus
   天狗沼に生息。宮島沼では、東側岸辺に小数。伊藤沼など旧河川沼に残存。
フトイ   Scirpus tabernaemontani
   湧沼やえっちゃん沼で、沼といっしょに消滅。宮島沼に僅かに残存。
マコモ   Zizania latifolia
   宮島沼、手形沼に繁茂。他の沼には少なく、減少気味。
キタヨシ   phragmites communis
   手形、天狗、桜井、貞広の沼周辺岸に生息するが、開拓進展の為、沼岸面積の減
 少で少なくなった。親子沼、宮島沼には未だ多い。
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増加傾向のもの
 沼の底土が、何らかの要因で肥沃化してくると増殖してくる族でもある。気温水温が高いほうが元気になって、増え方も目に見えてくる。
ヒシ   Trapa japonica
   宮島沼ではヒメビシ T.incisa、菱沼ではオニビシ T.bispinosa が優勢種。銀 
 沼、桜井沼、貞広沼、天狗沼等ではヒシが繁茂。沼毎に個体変異が見られる。
   ただ、1993年のような冷害を受けると、種子の稔りが悪くて急激に個体数を減ら
 すことがある。そうすると、回復までに数年を要すことになる。
ガマ   Typha latifolia
   宮島沼では増加。一般に乾燥しかけた湿性地で繁茂。
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その他のことで
  帰化植物・流入植物の出現
 近来の人の往来増加や農地・水路、河川築堤整備に伴った、ダンプカーに代表される運搬機材運用の影響で、今までは見られなかった植物が出現している。
 これらは、今のところ野鳥観察センター側の突提付近で見られるブタナ(タンポポモドキ)、コウリンタンポポ、アメリカセンダングサなどの陸生植物である。しかし、近々水中の植生にも、何らかの影響が現れるのではないかと危惧される。
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