美唄市が誇る大切な地域の資源として、次世代・後世に残して行かなければならない世界的にも貴重な日本最大・最北のマガンの寄留地「宮島沼」の国設鳥獣保護区設定及びラムサール条約登録湿地に向けて地域合意を得、環境省もその手続きに着手したところである。
 マガンが飛来することによる自然環境の保全対策、農業被害対策、観光対策、環境教育など、今後、取り組んでいかなければならない地域における課題も多い。
 今回の調査は、平成13 年度宮島沼保全活用計画を策定するにあたり、国内では小麦等への食害対策が確立されていないことから、先進的な取り組みが行われている海外の事例を研究し、美唄市独自の方向性を確立していくとともに、国・道へ制度の確立や財源対策などの提案型の要望を行っていくための基礎資料として活用するために実施するものである。
 平成12 年3 月開催の「宮島沼フォーラム」において、研究者・農業者からも海外事例の研究の必要性が強調されており、東大大学院、野生生物研究等法人、美唄市行政担当者がそれぞれの立場で調査研究し、意見交換を行い、計画に反映することとしている。(地域農業者は都合により不参加)
 ラムサール条約登録湿地を目指すため、海外先進地調査は重要であるという認識。今後、ラムサール関連会議等において美唄市の取り組みについて事例発表・報告などの機会が拡大するため、専門的な知識や世界的な事例の研究が自治体としても必要。
平 成14 年2 月5 日(火)~平成14 年2 月13 日(水)(7 泊9 日間)
オランダ・イギリスの2 カ国
オランダ イギリス
正式国名 ネーデルランド王国 グレート・ブリテン及び北アイルランド連合国
首 都 アムステルダム ロンドン
面 積 41,000 平方キロメートル 244,000 平方キロメートル
人 口 1,529 万人 5,880 万人
時 差 日本より8時間遅れ 日本より9 時間遅れ
気 候 1年を通じて変わりやすく、雨具必携 霧と雨、日本より高緯度だが温暖
主要言語 オランダ語(英語もOK) 英語、ウェールズ語、ゲール語
通 貨 ユーロ、ギルダー ポンド(ユーロは現在導入されていない)
 東京大学大学院 ~牛山克己、天野達也
 野生生物総合研究所 ~富川徹
 美唄市 ~高橋英雄(農務係長)、平野太一(企画係主事)
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 ガン類の食害を単なる被害対策として対処するのではなく、共存を目指したオランダの取り組み、そこに至るまでの背景などを調査するとともに、農業者、行政、各団体、国との関わりや連携、役割分担、今後の方向性について調査。
 自然の保護か?観光の開発か? 圧倒的な先進地、イギリスの取り組みを調査し、特色ある宮島沼の利活用、運営形態の参考にしたい。
現地研究者、農業者、NPO 、NGO などへの聞き取りと現地視察
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   (視察の目的と内容)
 アムステルダム北部のWaterlandでは、農業者による組織がガン類を農地で収容する試みがあり、具体的取り組みの内容を組合管理者から解説してもらう。またガン類の農地収容を実践している農業者のお宅を訪問し、現状等を報告してもらう
 ホテル前をオランダ人ガイドとともに午前9 時に出発。あちこちに見られる水鳥たちを車中から観察しながら、車を走らせること1 時間半、アムステルダム北部のWaterl and に到着。ガン類を農地で収容する試みを実践している農業者組合の事務局の方(組合に雇われている自然コンサルタントで組合内に数人いるとのこと)とお会いしてディスカッション。
 まず、オランダの国土は干拓地(有名なポルダー)が多く、ガン類は先住民であるという認識が国民の心に根ざしており、自然や野生生物に対する保護の意識が非常に高いこと、オランダでは農業といえば牧畜のことであり、ガン類は収穫前の高蛋白な牧草を採食して食害を発生させ、1羽が1日につき約1㎏の牧草を食べること。
 また、オランダは欧州において最も多くのガン類が飛来する国の一つで、欧州を南下する(イベリア半島のスペインやアフリカ大陸)渡り鳥70万羽の約1/3が飛来し、現在Waterl and だけでも20 万羽になるが、15 年ほど前まではガン類の飛来は少なかったこと。飛来するガン類はマガン、ヒシクイが過半数を占め、その他、ハイイロガン、カオジロガン、コクガンなど。
 そして、農業者は飛来する20万羽もの鳥に対し、何らかの対策を講じて追い払うということは非現実的であると考えていることなど、基礎的な事項についての解説をいただいた。
 その後、車で移動。このあたりの農村地域は、農道の整備状況の悪いのが特に目につき、幅員も北海道の市道の2 /3 くらい?で普通車さえもすれ違うのがやっとの状態。ところどころに回避場があるくらい。周囲は非常に大きな牧草地帯が湿地そのものという状態で、スケールの大きさ、壮大さに驚く。
 ガイドさんと事務局の方の紹介により、組織の一員でガン類の農地収容を実践している農業者のお宅を訪問し、取り組みの状況を解説いただく。
 まず、現在、オランダのほかイギリス・フランス・アイルランドなどで猛威を振るっている牛の口蹄疫の影響(安全宣言・終息宣言を出した国家もあるが)を受けて、ミルクやチーズなどの加工製品は1 /3 から1 /4 にも価格が下落するなど、農業者はおろか国家的な問題に発展している大きな課題を抱えている現状、そして、非常に苦しく厳しい農業経営を余儀なくされている実状を説明いただいた。
 補償の制度は、政府の主導により補償条例(※注1 )が制定されたことにはじまる。
 しかしながら、この補償条例は報告の手続きや補償調査員とのやりとりなど、申請から認定までにあまりにも時間と労力を要するため、農業者の評価は低かったとのこと。
 農業者は、この補償制度に変わる新たな制度を作り上げようと、地域一帯の農業者全戸数が組織化を進め、政府との交渉をスタートさせ、協同の作業により補償条例にかわる新たな報奨制度(※注2 )を制定することとなった。
 この新しい制度は、農業者が農地を採食地として提供することで鳥をそのエリアに収容し、農業者は報奨金(努力や善行に報いるという意味合いで補償ではない)を受け取って保全活動を展開するというシステムで、農業者と政府双方の話し合いにより考案した制度であることからうまく機能し、また、こうした取り組みを通じて、農業者は環境や鳥獣を保護・保全し、社会に貢献しているのだという自負を強くしたとのこと。
 また、制度の中には、農業者は環境に対する理解を深めることを目的とした政府主催の環境教育講座を4 日間受講することなどの制約事項も盛り込まれているが、いずれにしても政府の対応は一律の押しつけではないとのことであり、農業者は、むしろ制度がどの程度継続されるのか?国家予算は今後も大丈夫なのか?ということを心配しているとのことだった。
 また、壮大な自然や野生生物を貴重な観光資源として活用したり、環境教育の生きた教材として活用する考えはないのか?という質問に対しては、具体的な取り組みを考えているような返答はなかったが、オランダの消費者は食品に多くのお金をかけないなど、付加価値をつけた商品の開発をあまり考えないことが背景か?

 むしろ、この広大でスケールの大きな地域で生活することそのものが、環境教育を享受することにつながっているのではないかと感じた。どおりで、景観も含めて、人為的な開発の跡はほとんど見られないはずだと思った。自然は自然のままが一番か?
  (視察の目的と内容)
 It Fryske Gea (同州ネーチャーリザーブを管理する組織:NGO団体)のJos Hooimeier 氏による解説をもらう。Frieslandは、オランダにおいてガン類による農業被害問題が最も顕著な州で、It Fryske Gea は農業者と行政が協力関係を保って、ガン類の管理と保全に取り組んでいる。その取り組み内容や、ガンの採食風景、塒入を観察する。
 Friesland は農業被害問題が顕著で、オランダにおいて報奨金が最も多く支払われている地域。この地域には国家とガン類の保全と農業についての様々な問題を話し合う「It FryskeGea 」というNGO 団体があり、この団体はFriesland の保護区の管理をしている自然保護団体で、州政府の財政援助を受けながら活動を展開。管理者のJos Hooimeier 氏による解説をいただく。
 この地域のガン類による食害は相当に深刻な状況にある。これは、食害の範囲が広大すぎて適切な防除器具がなく、従来からマンパワーによるガン類の追い払いが行われてきたが、いくら追い払っても戻ってくることに加え、夜間も採食すること、また、追い払うとガン類が余計にエネルギーを消費して、より多くの食物量が必要になってしまうことなどが背景にあり、こうしたことから、ガン類を受け入れするという方針が生まれた。

 被害の状況としては、牧草の食害は牧草の目減りした分、飼料を他から買ってくるなど対応をしているが、植生が遅れる分、家畜の放牧も2 週間ほど遅れてしまうこと。また、ガン類に踏みつけられて牧草地の地面が固まってしまうほか、ガン類の糞の臭いで家畜が牧草を食べたがらないことなど。
 また、この地域一帯には、採食地と塒の両方が数多くあるので特にガン類は集まりやすく、食べ物があることで繁殖力が増加しているのではないかという見方があり、今後の対策としては保全管理と個体数のコントロールが課題であるとのこと。
 また、環境教育用のパンフレットを作成し、地域に配布するという興味深い取り組みがなされているが、団体だけでは予算がまかないきれないため、銀行を積極的にスポンサー活用するなどして資金対応している。

 説明の後は、地域周辺の視察に出かけることとなり、車に乗り込んでの移動。車中からガンの採食風景をみていると、あちこちにプレート(立て看板のようなもの)がたっていることに気づく。説明を求めると、この看板はガン類の採食地、すなわちガン類の受け入れを認めた農地であることを示すものだそうで、注意深く見ていくと道中たくさんあることに気づく。まさにガン類の宝庫、楽園。
 次の訪問先は、牛をかっている牧場。この牧場の豪快かつ温厚そうなご主人から、この地域の報奨金の概要や取り組みの状況についておおまかな説明を受ける。
 報奨制度の算定基準は非常に詳細で、メニューも豊富にあり、農業者はこの多彩なメニューから自分たちが取り組めるものを自らが選定(※注3 )し、実践していくとのこと。例えば、ガン類に対する牧草地の提供時間によって報奨金額も変わるということから、つまり、牛を少しでも早く放牧から牛舎へ返せば、その分だけ牧草地をガン類に提供する時間が長くとれることになり、このことが報奨金の増額につながるようなシステムになっている。
 ご主人の牧場においては、特にガン類の飛来数が多い時には、牛は牛舎の中に用意してある乾燥した牧草で我慢させるなど、ガン類の採食時間をできるだけ多く確保し、また、牛の放牧の時期そのものをずらしたりするなど工夫をこらしている。
 塒入りの観察は、あまりの天候の悪さに中止となった。湿地は見た目にも宮島沼より数倍も大きいのだが、観察者に対する進入規制等がきちんとしかれ、午前中の視察先もそうであったが、まさにガン類たちの視点を重要視した自然保護のあり方が徹底されている。

  (視察の目的と内容)
 オランダはもとより欧州でも重要な河川、ライン川沿いの湿地を、Dr.Ebbinge の解説をもらい車中から観察する。また、同氏の研究機関であるAlterra を訪問し、研究の内容や成果などを説明してもらう。
 オランダはもとより欧州でも重要な河川であるライン川沿いを下りながら、至る所にいるガン類の採食風景を観察。Dr.Ebbinge と約束の場所で待ち合わせ、ライン川沿いの湿地を視察。ライン川と風車、そしてそこに生息する鳥たちの組み合わせはオランダらしい最高の景観。
 オランダに来て一貫して思うことは、農地をガン類の採食地として提供することが進んでいることから、郊外の広大な農地(牧草地)の至る所でガン類がみられ、このスケールの大きさには感服させられる。
 Dr.Ebbinge の研究機関施設である「Alterra 」を訪問。施設は斬新でゆったりできる自然の雰囲気。リサイクルできる建築資材や太陽熱の積極的な利用、貯水池による雨水の再利用など環境にやさしい施設となっている。研究室において映写による説明を受ける。
 その後は、Dr.Ebbinge の研究成果である、オランダ及びその周辺国におけるガン類の個体数の変動、渡りの特性、狩猟による影響、ガン類の分類調査などについて解説をいただき、さらにそれらの点についての動向を調べるために、現在、大規模なバンディング調査が進められているとのこと。
 また、Dr.Ebbinge は、オランダにおけるガン類の食害対策を推進している主要な人物で、特に急増している政府負担の補償金額の問題から、ガン類が採食できる自然湿地の復元を提唱したり、Waterl and やFriesland の事例でなされているような農業者のガン類の受け入れ方策の提唱実践を行ってきた。

  (視察の目的と内容)
 オランダの重要な農業地帯であるFlevolandを訪問し、農地の中のリザーブ(自然保護区)を視察。また、当初、工業団地としての開発を進めていた土地を転換し、ガン類等を受け入れる湿地としての保全を進めている Oostvaardersplassen を訪問し、その実践活動を見聞する。
午後からはオランダの重要な農業地帯であるFlevoland のOostvaardersplassen を訪問。組織管理者からの説明を受け、その後、敷地内を視察。
 Oostvaardersplassen は当初、国家プロジェクトの工業団地として開発が進められていた場所。しかしながら、造成半ばにして時代にそぐわないとしてガン類をはじめ様々な野生生物を受け入れる保全活動の場所へと大きく転換することに。オランダ政府林業委員会(※注4 )によって運営管理されている。
 ここはガン類にとどまらず、野生生物の総合的とも言える楽園。オランダの原生植生を残した大規模な受け入れ場所。オランダの生態系の重要な構成種である馬や牛、鹿などの野生生物が生息しているが、このことは、多様な植生を維持することで雑草の繁栄を防ぐなど、ガン類のための草地を維持する上で大きな役割を担っている。
 建設当初の目的から、海に面した位置にあるため、湿地保全のための水管理などが容易に得られ、水はリサイクルするなど効率性の高い水質管理を行っている。敷地内は自然保護の観点からの様々な制約事項がしかれているようで、法律で明確に保護されている模様。視察中には敷地内上空にヘリコプターが迷い込んで領空違反。視察を終了して管理棟に戻ると、すでに警察官数人が駆けつけていた。

 生息する生物は視察者である私たちに敏感に反応し、すぐさま警戒態勢に入る。野生生物の特性が失われていない状況は、まさに自然の保全活動といった印象。
 また、分断された保護地域をつなぎ、動物の移動経路の確保や生態系と生態系を結びつけるというコリドー(自然回廊)の構想があり、ここでは湿地と森林を結びつける構想が実践されている。

  (視察の目的と内容)
 WWT(英国水禽湿地協会:Wildfowl & Wetland trust)の本部が設置され、世界で最も先進的なリザーブであるSlimbridge を訪問。英国におけるガン類と農業被害の取り組みについて、担当者から解説を受ける。
 Slimbridge はWWT (英国水禽湿地協会:Wildfowl & Wetland trust )の本部が設置され、世界で最も先進的なリザーブのひとつ。WWT は国内で9 カ所の湿地等を管理する。
 視察当日は当施設の施設長が対応、WWT の概要や施設の運営形態、状況等を以下のように説明いただく。
 まず、WWT の創設者はSir Peter Scott でカリスマ的存在、現在も彼の教えをかたくなに継承した事業運営を展開。
 Slimbridge は農地(干潟)を改変することによりリザーブとしたものであり、付近を流れる汽水の川、Severn 川の水を活用した積極的な水管理を行い、多様な植生を維持している。また水生植物のあしを利用した水の浄化システムは、当施設の将来的な規模拡大にも対応が十分可能とのこと。
 リザーブ内の土地を周囲の農業者に安価で貸付するなど営農はできるが、牧草の刈り方をはじめとする営農方法についてはWWT がアドバイスしている。様々な生物にあわせた環境づくりのために、敷地内の多様な植生を保持できるよう工夫している。

 また、ガン類の渡り調査、ハワイガンの野生復帰、フラミンゴ、ガンカモ類の人工繁殖プロジェクト等の充実した学術研究を行っている。
 施設の配置としては、管理棟、直営レストラン、観察小屋数カ所を管理し、職員30名、ボランティア60 名による交代制勤務。運営に係る費用は、年間約19 万人の入場料、会員費、寄附ですべて成り立つという。
 施設はエレベーターやスロープを完備するなどバリアフリー化が図られているが、できるだけ経費がかからないように、廃材、リサイクル製品などを多用しており、施設に多額の経費をかけるなら「人」にかける方がベストであると特に強調されていた。
 そのほか、たいへん興味深い事例としては、場内に多数点在している展示については、単に見て学ぶということ以外に、遊びながら、体を動かしながら気づかない内に知識が得られるという体験的工夫がなされていること。また、アートホールを設置して様々な画家の絵画を展示販売したり、帽子やジャンパー、マグカップ、キーホルダーなどWWT のオリジナルグッズを売店で販売するなどしており、売り上げは団体の活動資金としている。また、レストランを直営としたのは、夜遅くに開催される見学会などに対応するためとのこと。
 来場者には、やはりガン類が一番人気であるが、ガン類が飛来しない時期に配慮して、フラミンゴを生息させるなど、年間を通じて来場者をあきさせず、できるだけ楽しませるように努力している。
 施設の建設にあたっては、ハード・ソフト両面にわたり、職員等の意見を幅広く聴取し、夢チーム、現実チームの2 チームを組織して意見交換。夢チームは現実面を考えず理想のみを追求して意見を出す。現実チームは理想を追求しつつも予算等の現実面を加味して意見を出す。その後、チーム間の討論により妥協点を見いだすという手法。
 管理棟内には、環境教育のためのホールやブースがいたるところに点在しているが、本日は学校が休日ということもあり、楽しみながら学んでいる子供達の姿であふれかえっていた。

  (視察の目的と内容)
 WWTが管理しているリザーブであり、ロンドン郊外の農地、貯水池を改変し、湿地として保全している地域。担当者から取り組みの解説を受ける。都市型の自然公園として、今後の宮島沼保全活用計画の参考にしたい。
 本日はLondon Wetland Centre を訪問。前日に引き続きWWT が管理しているリザーブ。ここは、農地、貯水池を改変し、湿地として保全している地域で、湿地の周囲は高層ビルや住宅街などに囲まれ、まさに都市型の自然公園という様相。施設の管理運営面、湿地の保全状況などは昨日とほぼ同様の内容であり、担当者から以下のように取り組みの解説を受ける。
 ここは、本来、貯水池であったものを改変して今の形にし、土地の所有権については貯水池の会社が現在も保有。現在は対象とする水鳥や水鳥の利用の種類によって、6 種類の湿地を管理しており、また、湿地の保全に重要となる水の確保については、地下水があることから豊富で、水質浄化も自然的になされているとのこと。
 特殊な取り組みとしては、敷地内の多様な環境を保持することを目的に、潜水タイプの鳥たちのための深場や湿地の底面が小石のもの、水草のものなど、多種多様な沼を人為的につくりあげていること。また、観察小屋は水鳥の視点からは見えにくいが人の視点からは見やすいこと、観察窓をできるだけ小さくするとともに子供用や障害者用も用意してあること、観察者へのマナーを押しつけることなく呼びかけるなど、水鳥が安心して羽を休めることができるよう、様々な工夫や取り組みが随所になされている。
 また、敷地内には散策路が整備されているが、すべての面において自然に配慮したつくりとなっており、手すりや看板などは色や材質にこだわるなど、ガーデニング業者に委託して専門的にプロデュースさせている。
 敷地の周囲は都市であり、住宅街も密集しているが、ガン類による食害などといった大きな問題は発生していないとのこと。
 世界のガンカモ類を世界旅行気分で見ることができるような環境整備がなされ、しかも、間近で見ることができる点に大いに魅力を感じた、ガンカモ類の保全や環境教育に最大の重点が置かれている、まさに先進的なリザーブであった。

 オランダ・イギリスでの5 日間の調査視察を終了し、オランダでは農業被害対策を、イギリスでは地域振興策としての自然環境の活用を主に見聞することができた。
 オランダの事例の最も注目すべき点としては、この地域には、食害によりガン類たちを追い払う行為を行っていた時代が過去に確かにあったこと。また、鳥の飛来数や食害による被害のスケールの大きさから、政府も国家プロジェクトとして対応せざるをえなかったこと。そして、農業者は自らの生活を守るためには何らかの活動を展開しなければならず、結果的に政府と農業者による新しい報奨の制度がシステムとして十分に機能し、人(農業)と自然との共存への意識が地域において高まりをみせたことにつきるものと考える。
 ガン類の飛来数が年間数十万羽ということから、農業者には駆除したり追い返したりするだけの余力がなく、むしろあきらめにも似た感情を持つに至るわけだが、このことが農業者自身のやる気を急速に奮い立たせる背景となり、今では自然や環境、ガン類に関する知識は非常に豊富で、保全活動に対する意識の高さや熱意、自然に対する謙虚でひたむきな姿勢は学ぶべき点である。
 また、こうした壮大な自然や野生生物を貴重な観光資源としての活用したり、環境教育の生きた教材として活用する考えはほとんど無いに等しく、景観も含めて、人為的な開発の跡はほとんど見られなかった。むしろ、農地にプレートを配したり、観察者に対する進入規制等がきちんとしかれるなど、まさにガン類の保全を前提とした自然保護のあり方が徹底されているものであった。

 イギリスでは、WWT (英国水禽湿地協会:Wildfowl & Wetland trust )の取り組みを視察してきたが、オランダの自然保護の徹底さと相まって、都市型の自然公園的な活用が図られており、自然環境の保全を目的とした積極的な人為的開発が進められていた。
 ただ、この取り組みは、単に自然保護の啓発を図ることを目的に施設されたものではなく、ガン類をこの地に収容することで、他の農業地域の食害を必然的に低減させるという効果があるなど、いわゆる、人と自然の共生、観光の振興、環境教育の推進等がバランス良く高い次元で達成されている点にあり、この相乗効果をもたらすシステムには感心させられることが多かった。
 また、湿地の半永久的な保全のために、テムズ川の水を上手な活用や、水生植物を活用した水の浄化システムを開発するなど、水質の管理や水量の確保はしっかりとなされており、湿地そのものの保全管理なくしてガン類の保全や施設の運営はありえないことを学んだ。
 湿地の保全活用や、施設の管理運営形態、NGO やNPO の仕組みなど、私たちにとっては貴重なノウハウであり、宮島沼の近い将来の理想型を見た感が強く、大いに参考にすべきと考える。
 終わりに、今回の海外視察から得られた知識や経験を宮島沼保全活用計画に反映させるとともに、環境省や道に対する提案型の要望づくりの基礎資料とし、また、本事例を地域の関係者や団体にも幅広く周知・浸透させ、鳥獣保護区設定やラムサール条約登録湿地に向けた市民各層の気運醸成を図っていきたいと考える。

(※注1 ) この補償制度の概要は、まず食害が発生すると、州政府の食害委員会(WICO )から被害額の査定専門員が派遣され、食害を受けた箇所と受けなかった箇所との比較から、食害量、食害による生長の遅れ、収穫物の被害額の査定等について調査される。そして、査定専門員から防除策の徹底、再播種、施肥、除草剤等に関するアドバイスが下される。農業者は査定専門員の査定やアドバイスを受けて、Game Fund(狩猟基金:狩猟ライセンスの交付によって得られる資金と政府援助資金)に補償金の支払いを要請し、認められるとようやく支払われるという仕組み。農業者には手続きの複雑さから不評だった。
(※注2 ) 牧草地や農地、自然環境にガン類を受け入れる報奨制度「Room for Geese (ガンのための部屋)政策」のこと。農地を利用する湿地性の鳥類の保全、湿地植物の保全など、その地域の実態にあった項目ごとの契約による施行。例えばWaterland の事例では上記事項に加えて、牧草地で繁殖する鳥類の保全(営巣中のケリの巣をよけて牧草を刈るなど)についても契約されていた。また、Friesland では、冬季のガン類の収容に関する契約だけであったが、牧草をガン類の食べやすい高さにしたり、羊を牧草地に入れないなどの契約が含まれていた。こうした契約を結んだ農業者は、報奨金を受け取って活動に関わるが、補償制度にくらべて煩雑な手続きがないことが大きなメリットとなった。
(※注3 ) Room for Geese 政策が制定され、この政策を受け、いくつかの国の研究機関との協同のもと、州レベルや地域レベルで独自の取り組みが進んでいる。また、州や地域ごとで独自の取り組みが講じられる理由は、飛来するガンの種類や飛来する時期、季節、食害の状況等が異なり、農業者が抱える問題や、住民感情等も違うためであり、政府の政策に取り組む段階では、地域は地域の実状にあわせてその政策を選択・契約すると言うことで、政府の押しつけ的な政策、制度ではないとのこと。
(※注4 ) オランダのように人口が密集した国では、特別な自然地帯の保全が大切であり、政府は貴重な自然地帯を自ら買い上げて管理する(Flevoland のOostvaardersplassen の事例)だけではなく、民間団体に対しても、こうした自然地帯の買い上げや管理のための財政的援助を行っている。個別の農業者や農業者のグループが政府と契約を結び、自分の土地や自然保護団体の所有地の自然管理を担当する(Waterland やFriesland の事例)というケースが増えている。1990 年に打ち出された自然保護政策プラン(農業・水産・自然管理省による)では、政府は自然をあるべき姿に戻すことを望んでいる。このプランの中で最も重要なプロジェクトは、「生態的メイン構造」という一貫した自然地帯ネットワークの構築であり、この自然ネットワークは動植物に将来の存在の基盤を保証し、2018 年に70 万ヘクタールの自然地帯の実現を目標としている。
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