宮島沼は、北海道のほぼ中央部にあって、北緯43 °20 ′、東経141 °43 ′、西美唄地区の市域北西を流れる石狩川から東へ約500m に位置し、標高13m 、最大水深2.4m 、平均水深1.7m 、湖面積41ha (ヘクタール)浅く小さな淡水湖で、流入・流出河川は特にみられないが、周辺の田・畑の潅漑用水として一部利用されている。集水域の土地利用状況は、田・畑地で、年平均気温は6.6 ℃、年平均降水量は1,074 ㎜である(北海道公害防止研究所 1990 )。
 以下に、沼の水質・土壌、及び沼の周辺植生について関係資料をもとに記述する。


 宮島沼の水質については、これまでには北海道公害防止研究所(1990 )による記録 をはじめ、その後北海道公害防止研究所から変わった北海道環境科学研究センターが行う記録として、1979 年から1995 年までの記録がある。これら現段階で公表されている記録から水質について整理すると、図1-1に示すとおりである。
湖沼における生活環境の保全に関する環境基準として「
環境保全」「自然環境保全」の二つの基準がある。
 これらの基準をもとに、宮島沼の水質を各項目の特性について比較を行ってみると、次のとおりとなる。

 化学的酸素要求量(COD)は、1984 年の段階ですでに「環境保全」の基準値(8mg/l )を上回る10.5mg/l であったが、さらに悪化傾向を示し1995 年には基準値の3 倍以上である26.7mg/l となっている。これに対し、溶存酸素量(DO)は、もっとも数値の悪かった1990 年でも「自然環境保全」の基準値である7.5mg/l を越える良好な結果を残している。
全リン(T-P)では、1990 年までは「環境保全」の基準値(0.1mg/l )を満たしていたものの、1995 年には0.171mg/l と大幅な悪化が見られた。また、同様に全窒素(T-N)では、84年で「環境保全」の基準値(1.0mg/l )をやや上回る1.2 mg/l 、90 年では1.0 mg/l と、ほぼ「環境保全」の基準値前後で推移していたものの、1995 年にはやはり2.0mg/l と大幅な悪化が見られている。また、透明度に関しても、1979 年の1.1m の測定値から1995 年には約0.2m にまで落ち込んでおり、同様な悪化傾向を示している。
以上、述べてきたように、溶存酸素量(DO)の値は「自然環境保全」の基準値(7.5mg/l )を満たす良好な状態を示しており、腐敗が始まる等の極めて深刻な問題は、これまでのところ発生していない。しかしながら、溶存酸素量(DO)を除く化学的酸素要求量(COD)、全リン量(T-P)、全窒素量(T-N)の数値については、1995 年現在で、それぞれ「環境保全」の基準値(8mg/l 、1.0mg/l 、0.1mg/l )を大きく上回る値を示し、「自然環境保全」の基準値(1mg/l 、0.1mg/l 、0.005mg/l )については、比較にならない程の差がみられている。
一方、後述するが、宮島沼の周辺土壌は泥炭土を主体に形成されている。このような条件下においては、計測方法の特性上COD 、T-P 、T-N などの値は、実際の水質よりも高い値を示す傾向にある。しかしながら、計測値が経年的に大きく上昇していることから、宮島沼の著しい富栄養化は明らかであり、特に1990 年から1995 年にかけて大幅な水質悪化がみられたことが顕著である。近年は、夏季にアオコの発生も報告されている。さらに、この間マガンの飛来数は著しく増加しており、水質悪化との関連性を指摘する声もあるが、マガンの飛来数増加率と水質悪化を示す数値の増加率とは、必ずしも一致しているとは言い難い。沼の水の汚れた原因については、マガンなどの水鳥の飛来による排泄物等のほか、排水路からの周辺農家で使用する肥料等の有機汚染物質の流入、来訪者の給餌による影響などが考えられ、水質改善のためにも、今後これらの因果関係を究明していく必要がある。
土壌については、石狩川流域に位置する石狩川低地に属し、表層の地質は泥炭と粘土が交互に分布する形となっており、層厚では6m を越える大規模な泥炭地がみられている。
宮島沼周辺部は、細粒グライ土壌も分布するが、主体はヨシ、スゲ類、ヤチハンノキ等からなる泥炭土の低位泥炭地となっている。


 宮島沼及びその周辺における植生調査としては、北海道が行った「宮島沼及びその周辺における水鳥類動態食性等に関する調査研究報告書」(1991 )の中の湖面周囲での植生概要と現存植生図(分布状況)、及び草野貞弘氏が宮島沼レポートにとりまとめた「宮島沼の植物の変遷」(1998 )があるくらいで、他に関係する資料や情報はほとんどみあたらない。
これらによると、植生は、湖面全域でマコモ、ヨシ群落が広く分布しており、水面部から陸上部になるにつれて次第にオオヨモギ、オオイタドリなどの草本や、ヤチダモ、ハンノキ、オノエヤナギなどの広葉樹低木林、並びにエゾイタヤ、ハイエンジュ、シラカンバなどの広葉樹が散在分布している。また、周辺域ではヤチダモ、シラカンバ、オオバボダイジュ、ドロノキなどの保安林、植林地などがみられている。
前述の資料より、宮島沼周辺の現存植生図を示すと、図 1-2(下図)のとおりである。
一方、草野貞弘氏によると、古くは沼及び周辺湿地にはホロムイスゲ、ホロムイツツジ、ソツツジといった絶滅種や絶滅寸前種等の貴重な種もみられていたといわれるが、今日までにおいて沼や湿地の水生植物の異変がおきてきた背景がある。今後は水鳥類の生息に重要となるこれら水質環境や乾燥化への対策等が今後の課題となっている。
図 1-2 宮島沼周辺の現存植生



 宮島沼の鳥類相を把握するため、環境省の委託で㈱野生生物総合研究所が行った「平成12 年度 国設鳥獣保護区設定に関する調査(宮島沼)」(野生生物総合研究所2001 )と、「平成13 年度国設鳥獣保護区設定に関する調査(宮島沼)」(野生生物総合研究所2002 )(以下それぞれ「野生総研(2001)」、「野生総研(2002)」という)がある。これらによると、美唄市全体の鳥類相として、17目49科239種(種・亜種を含む)が確認されていることになる。
また、最新の宮島沼周辺の鳥類相データとしては12目30科105種(種・亜種を含む)が確認されている(表1─1 <PDFファイル>)


野生総研(2002)の最新データから、渡り習性による区分に注目して宮島沼周辺の鳥類相をみると、夏鳥が46 種、冬鳥が17 種、留鳥が26 種、旅鳥16 種が確認されており、また、生息区分では、「海岸・島の鳥類」が11 種、「森林の鳥類」が27 種、「川・湖沼の鳥類」が37 種、「灌木・草原の鳥類」が10 種、「農耕地・都市の鳥類」が20 種となっている(図1-3 )


 これらから、宮島沼の鳥類としては全体として多種多様に幅広い鳥類相にあることが示されている。
 宮島沼に飛来するマガンをはじめとする水鳥類についての検討を行ううえで、その内訳をみると、表1─2 のとおりとなる。

 宮島沼を含む美唄市の鳥類相のうち、天然記念物や環境省等がリストアップしている着目種についてみると、鳥類確認のリスト中、コウノトリ、カラシラサギ、トモエガモ、セイタカシギ、ハギマシコなど23 種にのぼり、また、猛禽類についても国内希少野生動物種のオジロワシ、オオタカ、ハヤブサをはじめ、ハイタカ、ハイイロチュウヒ、チュウヒ等多くの貴重な種類が出現していることがわかる。
宮島沼及びその周辺は農用地として広がる一方、西側は石狩川に隣接、また周辺には沼や湿地や小河川が散在している。これらはガン類をはじめとして淡水性カモ類、草原性鳥類等他、多くの鳥類の良好な生息地となっており、豊かな鳥類相を保持する環境を有しており、渡りの中継地として重要な役割を担っていると考えられる。
(本調査では、都合上カモ科のヒシクイAnser fabalis についてはと亜種オオヒシクイA.f.middendoriffii と亜種ヒシクイA.P.serrrirostris の2 亜種をそれぞれ1 種として扱い整理した。)



 宮島沼における水鳥類の季節変化をみるために、最新の野生総研(2002)の調査より宮島沼周辺の確認種数を月別に表すと図1─4 のようになる。


次に、野生総研(2001)から、各年による主要な種の渡り時期(春季、秋季)における飛来数の増減をグラフに示すと、図1─5(1)~(3)のようになる。これにより、以下に、個体数等の特徴を記述する。なお、このグラフは、各種の春秋をあわせた各年の最大飛来数の中で、都合最も飛来数の多かった年のデータを100%として、それぞれの時期の飛来数を割合で示したものである。



 宮島沼の動物相として、宮島沼に生息飛来する鳥類を除いては、その他動物(脊椎動物、無脊椎動物)の詳しい資料に乏しい。宮島沼の動物相について触れてある資料としては、現時点では「美唄市とその周辺における動物相の解明とその保護」(1993 正富)、及び「美唄の魚貝(未発表)」(1998 草野)が主要なものである。
 これら資料より、宮島沼周辺の種とは特定できないものの、美唄の動物(鳥類を除く)として整理した表を変更作成すると、表1─3 に示すとおりとなる。
 哺乳類では、エゾヤチネズミなどのネズミ類やキタキツネなど8 科17 種が確認されている。以下同様に、両生類ではエゾサンショウウオ、エゾアカガエルなど3 科3 種、爬虫類ではアオダイショウなど4 科6 種、魚類ではコイ、ギンブナ、ドジョウなど8 目12 科30種が確認されている。また、その他では巻貝類3 科4 種、二枚貝類1 目1 科1 種、甲殻類4 科4 種の記録がある。
 今後は、宮島沼周辺に生息するそれら動物相を明らかにすることが求められるが、とりわけ湿地環境としての多様な生息環境の保全に視点をおいた調査を行っていくことが必要であると考えられる。



宮島沼は、我が国最大規模のマガンの渡来地であり、毎年、秋季及び春季には多数が渡来する。以下に、野生総研(2001)より、秋季、春季別に渡りの状況等についての特徴を記述する。

次に、マガンの採食地の分布(春季)についてみると、図1-8 に示すとおりである。


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