ここでは、市民ワークショップで頂いたご意見を参考にしてこれから取り組むべきことについて計画します。

※赤枠部分をクリックすると詳細説明へジャンプします
自然」「農業」「観光」「人・教育」の4つの分野のいずれも、その目標と現状との間には、大きな格差があります。この格差を埋めない限り、目標を達成することはできません。そこでまず、4つの分野それぞれについて、その目標を達成するために必要な方法を考えました。(13の中項目に分類できる36の方法)。














これから取り組むべきこと…目標を実現するための施策
4 つの
分野
目標とその考え方 目標と現状との差を埋める方法
[13の中項目・36の方法]

未来に
続く
自然
◎継続的に飛来してほしい
◎自然保全がステータスになる


○まず保全しよう…人よりもマガン優先
○誰でも来てくれれば良いという訳でない
 (マナー)
A-1
マガンにストレスを与えない
1 見学場所を限定する
2 ガンから人が見えないような施設を整備する
3 沼の近くは自動車乗り入れやめる…離れた場所に駐車拠点
A-2
宮島沼自体の環境を保全する
1 鳥獣保護区、ラムサール登録湿地の指定
2 定期的な環境調査を行いチェックする
3 石狩川との連続性の確保
4 他市町村と連携した石狩川水系全体の保全
A-3
マガンのエサ場を確保する
1 食害への対策
2 意図的なエサ場の確保とマガンの誘導
3 農業との関係改善 ⇒B へ

元気な
農業
◎稲作したい
◎ゆとりがほしい
◎マガンを守る共生することがブランドに


○発想の転換
  農業だけでなく…サービス・価値を売る
B-1
食害に対応する
1 農業政策に沿った麦転作を前提とした麦食害の対策
2 食害で発生する追加農作業への援農
3 国へ食害対策の新制度を提案
B-2
特徴的な農業を展開する
[消費者と関係強化]
1 農産品などの直売
2 都市住民の農村滞在受け入れ(例:グリーン・ツーリズム)
3 販路の安定確保(例:都市住民との契約栽培)
B-3
新しい農業構造を模索する
[米が作れる農業]
1 土地買い上げて生産を委託
2 消費者との共同出資による農業生産

外からの
応援
◎地域応援団づくり
  …今来ている人を手がかりに
◎新しい仕組み
  グリーン・ツーリズム、環境教育など


○美唄にあるものを観光でつなぐ
  …観光+農・食・教育
C-1
最低限の施設を整備する
1 交通動線計画と誘導看板の設置
2 シーズン期の市街地から交通手段の確保
3 情報発信の充実
4 休息施設の整備
C-2
新しい観光形態を展開する
1 他の地域との交流・情報交換を通じて刺激を受ける
2 農業観光
3 環境観光
C-3
外部の力を活用する
1 来訪者からの情報受信のための組織・仕組み(受信>発信)
2 応援団の組織化
3 他の地域資源との組み合わせ

担うのは
市民
◎基礎的な支援の広がり



○自主的な活動の仕組みと展開
  …少しずつでも
D-1
市民の活動体制を構築する
1 毎年ガイドラインを検討…決めるために関係者が集まる
2 市民組織の結成と活動展開
D-2
活動拠点をつくる
1 専門知識を持った人材の確保(学芸員、市民研究者)
2 研究・啓蒙のための拠点施設の整備
D-3
教育を通して未来に引き継ぐ
1 学校教育のカリキュラム組み込み
2 社会教育プログラムの開発と展開
D-4
学術資産を蓄積する
1 研究者への支援体制
2 研究助成制度
これら分野別の目標を達成する方法は、それぞれ単独で実施してもよいのですが、限られた人手・お金・時間の中で効果を挙げるためには、関連するものや同時に行ったほうが良いものをまとめて、戦略的に行う方が効果的です。
そこで、4分野・13中項目の方法を、11の戦略的な施策として組み上げました。各施策の内容と実施手順は下図の通りです。
↑上に戻る





















ここでの解説は、市民ワークショップから提言のあった13 の中項目・36 の方法を一つの方向性としながら、取り組むべき11 の戦略施策ごとに、その実現に向けた具体策を分析・例示するものである。
A-2-1[自然]鳥獣保護区・ラムサール条約登録湿地の指定
A-2-2[自然]定期的な環境調査を行いチェックする
[背景] 国設鳥獣保護区ラムサール条約登録湿地など公的機関からの認定は、強制力のある保全策の展開に効果がある。
市民や観光客の注意を喚起し、保全に対する意識付けに貢献する。
[現状] 保全に対する施策の強制力は薄く、付近に多数散在する湖沼とで認知度・注目度の差が少ないことから、保全に対する意識が盛り上がらない。
[参考] 例えば、国設鳥獣保護区とラムサール条約登録湿地の認定を受けた場合には、下表のようになる。
[主体] 認定手続き=市(認定のためには市民の熱意が必要)
[細施策] 国設鳥獣保護区やラムサール条約登録湿地など、施策の実効性と権威のある公的機関の認定を受ける。
国設鳥獣保護区 ラムサール条約登録湿地
指定された
場合の制限
鳥獣保護区:
鳥獣の捕獲の禁止
給餌施設などの設置を受認する業務
鳥獣保護区のうち特別保護地区:
工作物新築の場合に許可が必要
特に制限はない
国として湿地の保全に国際的な責任
国内法(鳥獣保護法、自然公園法など)で規制
国が行う
施策
①保護区の管理
管理員の配置(利用者の指導、鳥獣生息状況調査、施設管理など)
業務の報告
管理員への指示
管理員からの報告の取りまとめ
②施設整備
標識類の整備
管理棟、観察舎、環境維持施設などの整備・管理運営(調査研究や普及啓発)
③特別管理
生息環境改善事業や利用環境に応じ た特別強化管理
登録湿地の保全を促進し適切に利用 するための計画作成

湿地の価値の普及啓発を行うための 施設整備
水鳥類の保護および湿地保全のため の学術研究、普及啓発等の拠点施設と して「水鳥・湿地センター」を整備


[背景] 宮島沼の環境を保全するためには、水質、植生、周辺土地利用による環境への影響などを、定期的に監視して変化の兆候を事前に捉え、今後の深刻な環境悪化の危険性を未然に防ぐ必要がある。
[現状] 宮島沼の水質は、年々悪化し富栄養化の傾向を示しており、水質悪化のメカニズム解明と適切な対策は、特に早急に必要である。
最も基礎的な水質調査で断片的な調査がなされているだけで、環境保全に必要な基礎的なデータは存在していない。
[主体] 調査主体=市、国・道(協力:研究者・NPO ・農業者)
[細施策] 宮島沼に関する基礎的な環境調査を定期的・継続的に実施、系統的なデータを蓄積する。
水質
水量
沼周辺の植生
渡来状況(鳥類の生息など)
採食行動
湖沼生物
データの分析・予測を専門家に依頼し、対策が必要な場合には市民や関係機関に注意を喚起する。
具体的な対策の検討
↑上に戻る














D-2-1 [市民]専門知識を持った人材の確保
D-4-1 [教育]研究者への支援体制
D-4-2 [教育]研究助成制度
[背景] 宮島沼の保全や活用のためには、基礎的な調査だけではなく、そのデータをもとにした解析や予測など科学的な取り組みと、市民にもわかりやすいように解説することが必要である。
それを担うのは人である。科学的な理論に裏打ちされた学術研究機関の研究者研究の質を高め、地域に密着した活動を展開できる市民研究者は、研究の裾野を拡げる。双方の存在が揃って、はじめて研究のバランスがとれ、保全のための先導的な役割を担うことができる。
特に、宮島沼に対して継続的に応援してくれる市外の研究者の
ネットワーク構築、市民研究者の拡大、研究資産の蓄積は、宮島沼の保全にとって大きな底力になる。
[現状] 系統的に人材を育成する仕組みはなく、研究者の個人的な活動に負っている。
[参考] ラムサール条約登録湿地である霧多布湿原を抱える浜中町では、研究者への支援施策が充実している。町営のビジターセンターである霧多布湿原センターでは、研究者はラボ(研究室)を無料で利用でき、センター職員から様々な情報提供を受けることができるが、そのかわりに収集したデータや研究成果をセンターに提供してもらっている。また、町では「霧多布湿原研究助成金」制度をつくり、1 件あたり30 万円を上限に年間3 ~5 件の研究に対して助成金を支給している。制度創設からの研究件数は延べ50 件に達した。
[主体] 制度運営=市(協力:学術機関・市民)
[細施策] 市内外の研究者のための研究環境を充実する。
研究に対する認知と関係機関の協力
研究のための設備を備えた拠点の確保(設備と情報蓄積の両面から)
市外から来訪する研究者に対する滞在環境
研究者層の裾野を拡大するための市民への情報提供や交流
研究助成制度を創設する。
継続的な基礎的調査項目などに対応した研究部門の設置
↑上に戻る











A-3-1 [自然]食害対策
A-3-2 [自然]意図的なエサ場の確保とマガンの誘導
B-1-1 [農業]現行農業政策に沿った麦転作+食害対策
B-1-2 [農業]食害で発生する追加作業への援農
B-1-3 [農業]国・道へ食害対策の新制度を提案
[背景] 宮島沼周辺で稲作が展開されていた時には、マガンは落ち穂を食べていたので農業とマガンとの対立はなかったが、転作制度によって土地利用が畑作に転換するにつれて、農作物の直接被害が増加した。
稲作の再開が、農業とマガンとの対立を回避する最良の方法だが、現行の農業政策と営農体制の下では、稲作への復帰は極めて難しい。
短期的には、食害への対策を充実するしか現実的な対応策がない状況にある。しかし、マガンの継続・安定的な飛来には食料の確保は不可欠でり、農業環境も年々厳しさを増していることから、農業とマガンとの新たな関係性の構築は、中長期的に取り組まなければならない大きな課題である。
[現状] 宮島沼周辺の農業者は、食害による物理的・経済的な被害とともに、精神的な被害も強く感じている。
平成6 年度から、計画的に用意したエサ場へマガンを誘導する方法の研究が、続けられている。近年になって、研究者の協力を得て次第に知見が得られつつあるが、解明すべき課題もまだ多い。この方法は、あくまで食害対策の一つであり、これだけに過度な期待をかけることはできない。
平成14 年度からは、農業者に対する防除資材の貸与、転作助成金等補てんという方法で、美唄市独自の食害対策を補助要綱により制度化する予定。
[主体] 農業者、農業団体、市(研究者・市民が支援)
[細施策] 食害対策制度を円滑に実施する。
意図的なエサ場を造成しマガンを誘導する方法、および個体数の変動などについての研究を続けるとともに、できる部分から具体化する。
代替採食地の設置
市民の理解を促すため、食害で発生する追加作業に対して、市民がボランティアで援農する。
先の①②で述べたような基礎データや人材を活用したり、食害に関する詳細な調査を行って、効果的かつ継続的な食害対策を研究する。
[背景] 現在は、美唄市単独で対策を講じているが、地域だけの対策では限界がある。
近隣自治体にも食害が発生していることから、広域的な取り組みが必要となっている。
[現状] 国・道による支援制度はない。
[参考] オランダでは、農業者からの提案で国が制度を整備した事例が見られる。まず最初に、政府の主導により補償条例が制定されたが、申請手続きや補償調査など、申請から認定までにあまりにも時間と労力を要するため、農業者の評価は低かった。
そこで農業者は、この補償制度に変わる新たな制度を作り上げようと、地域一帯の農業者を組織化して政府と交渉し、補償条例にかわる新たな報奨制度が実現した。新制度は、農業者が農地を採食地として提供することで鳥をそのエリアに収容し、農業者は報奨金(努力や善行に報いるという意味合いで補償ではない)を受け取って保全活動を展開するというものである。農業者と政府の話し合いにより考案した制度であることからうまく機能し、取り組みを通じて農業者は、環境や鳥獣を保護・保全し、社会に貢献しているのだという自負を強くした。
この報奨制度の算定基準は非常に詳細で、メニューも豊富にあり、農業者は多彩なメニューから自分たちが取り組めるものを自らが選定し実践する。例えば、ガン類に対する牧草地の提供時間によって、報奨金額が変わる。牛を少しでも早く放牧から牛舎へ返せば、その分だけ牧草地をガン類に提供する時間が長くとれることになり、報奨金の増額につながるようなシステムになっている。農業者は、ガン類の飛来数が多い時には、牛は牛舎の中に用意してある乾燥した牧草で我慢させるなど、ガン類の採食時間をできるだけ多く確保し、牛の放牧の時期そのものをずらしたりするなど工夫をこらしている。
[主体] 農業者、農業団体、市、国・道(市民の理解、研究者の支援)
[細施策] 広域的な取り組みが可能な食害に対する支援制度の創設を、国・道に提案し、具体化に向けて運動する。
↑上に戻る











A-1-1 [自然]見学場所を限定する
A-1-2 [自然]マガンから人が見えないような施設を整備する
A-1-3 [自然]沼の近くは自動車の乗り入れをやめる
B-2-1 [農業]農産品などの直売
C-1-1 [観光]交通動線計画と誘導看板の設置
C-1-4 [観光]休息施設の整備
D-2-2 [市民]研究・啓蒙のための拠点施設の整備
[背景] 沼の湖畔に人が自動車で自由に無制限に出入りできる状態となっていることから、マガンは人から受けるストレスを強く感じており、これを早期に解決しなければならない。
シーズン期には、自家用車で観光客が殺到し、周辺農地での農作業を阻害しており、
自動車動線の秩序確保を行わなければならない。
マガンや農作業に対する自動車の影響を排除するためには、駐車拠点を
沼とは離れた別の場所に整備する必要がある。
[主体]
[背景] マガンに対する観光客の自家用車による影響を極力軽減するためには、宮島沼周辺の幹線道路・補助幹線道路の中から観光客の自動車を排除する必要がある。
その際には、宮島沼のマガンで特に食害を受けている北村や月形町との関係を強く意識し、宮島沼周辺の整備効果を美唄市だけで独占せず、広域連係につなげていくことができるような素地を模索すべきである。
[主体]







[背景] 沼の湖畔周辺に施設を整備する場合には、次のことに十分留意して、詳細な施設配置が計画されなければならない。
マガンが人間によるストレスを感じ、湖面全体を滞在空間として利用できないような状態を引き起こさないように、湖面から見た拠点施設は自然と違和感がなく、人間の視線にさらされないようにする。
市民活動や研究の拠点となり、来訪する観光客に対して情報提供ができるような機能を有する。
来訪する観光客と地元の農業者が、農産物の販売などを通じて接触でき、情報の交流が可能なような場所を確保する。
[現状] 既存施設を利用していることから、マガンに対する配慮は薄く、必要な機能を有する施設が計画的に展開していない。
[主体] 施設整備=市、国
運営=当初は市が担わざるを得ないが、次第に市民組織へ移行する
↑上に戻る














C-1-2 [観光]シーズン期に市街地から交通手段の確保
C-1-3 [観光]情報発信の充実
[背景] 宮島沼の環境保全の観点から、公共交通などの利用による利便性確保と車両の乗り入れを制限すべきである。
[現状] 市街地や市外と宮島沼との道路は、概ね整備ができている。宮島沼周辺の自動車交通については、一部で道路幅員が狭かったり、通行ルールが確立されていないが、これについては④で総合的に対策を打つ。
宮島沼へ行く主な交通手段は、自動車となっている。
[主体] 市・市民・経済団体・輸送機関などの協働
[細施策] 最低限、シーズン中の土日曜・休日だけでも、美唄市街地から宮島沼まで、自家用車以外での交通手段を政策的に確保する。
タクシーを活用する。
定額運賃の設定
乗合タクシー制度の導入
鉄道・バスとの連帯輸送 など
既存バス路線のバス停から宮島沼までのアクセスを改善する。
大富バス停付近(中長期で計画の駐車拠点)~宮島沼までの遊歩道


[背景] 提供すべき情報は、客観情報と主観情報の両面を充実させる必要がある。
客観情報は、沼に行くまでの経路、マガンの飛来数、気象条件のような、宮島沼を訪れようとするいずれの人に対しても必要な最低限の基礎的情報である。
主観情報は、地元からのメッセージを含むもので、自然・鳥・写真・環境・教育など来訪目的に合わせて編成される。
多様な情報提供の手段の中から、提供する情報の内容と目的を見極めて、的確に選定されなければならない。
[現状] 民間と行政の情報発信が混在し、連係がとれていない。
特に、
誘導サインなど、宮島沼までのアプローチに関する現地情報が未整備で、来訪者に混乱を与えている。
[参考] 霧多布湿原センター(②で前述)では、テーマ別にパンフレットを作成し、嗜好や目的に応じた来訪者主体的な現地でのアクティビティ(活動)に役立っている。
霧多布湿原センターのパンフレット
[主体] 客観情報の提供・誘導サイン設置・情報提供環境の整備=市
コンテンツ(発信する情報内容)の作成・更新=市民・研究者・農業者など
[細施策] ホームページによる情報提供。
客観情報の他に、テーマ別の主観情報の提供が必要。
提供する情報内容の更新が不可欠。
英語での情報提供も必要。
幹線道路から宮島沼までの誘導サインの設置。
テーマ別や学術的な解説ソフトのプログラムの開発。
↑上に戻る














C-2-1 [観光]他の地域との交流・情報交換を通じて刺激を受ける
C-3-1 [観光]来訪者からの情報受信のための組織・仕組みづくり
C-3-2 [観光]市外の応援団の組織化
C-3-3 [観光]他の地域資源との組み合わせ展開
[背景] 観光形態の動向が変わってきている。ただ単に自然景勝を見たり、慰安娯楽を目的とした旅行から、旅行者自らが主体的に参加したり、知的好奇心や癒しなど旅行者の内面に作用するような旅行に移行しつつある。
その代表的な動きの一つとして、エコ・ツーリズムがある。エコ・ツーリズムは、観光客と地域住民の関係・ふれ合い・協力を保ちながら、資源の保護・経済効果・地域振興のバランスを図るという新しい観光形態として注目されている。もともとは自然環境への影響を最小限に抑える観光を指していたが、近年は、エコ・ツーリズムをより幅広く解釈しようという動きが一般化している。その対象は自然資源だけでなく地域資源全般に及び、観光行動も単に自然保護にとどまらず、自然資源や地域資源の維持・活性と質の向上・持続に進んで貢献すべきという方向に進んでいる。
宮島沼で受け入れることができる観光客には限度がある。それは、①自然の受け入れ能力 ②地域のもてなし能力という2 つの制約要因があるためである。限りある受け入れ能力の下では、宮島沼の自然や美唄の地域資源に価値を認めてくれるよう啓発し、きちんと対応することによって満足感を高め、何度も来てくれたり宮島沼や美唄の応援団となってくれる人を求めるという、質(観光客との関係)を重視すべきである。
短期的な経済効果も一定程度必要であるが、量(入込数)だけを重視した観光を展開すると、自然の破壊につながりかねない。量重視・質無視から、量と質のかけ算でバランスをとるという基本的な考え方を、関係者や市民で共有すべきである。
[現状] 宮島沼には、誰でも無制限に来訪することができる状態にある。
観光の評価基準は入込数にあり、多くの関心はその増加に向いている。
ほとんどの観光客は、ただ宮島沼に来訪して見て帰るだけで、市内にある他の地域資源へ関心を持つことなく、その後の美唄とのつながりは、ほとんどない。
農産品の販売を通じて観光客と接触を持とうと実践したり、農村滞在について研究する農業者が現れてきている。
[参考] 浜中町では、ラムサール登録湿地である霧多布湿原をもとに、エコ・ツーリズムを展開している。ここでは、性格の異なる3 つの組織が互いに連係しながら、湿原の保全と活用のバランスを保っている。湿原の保護を担うのがNPO 法人の「霧多布湿原トラスト」で、全国から会員を募り、民有地である湿地を買い上げ保全する運動を展開している。浜中町に来る観光客が、エコ・ツーリズムなど財源確保のために展開している収益事業の顧客であり、そのエコ・ツーリズムや保全活動に接して会員となり、保全のための財源確保に貢献している。町営の「霧多布湿原センター」は、情報疎通の中枢的な役割を担っており、教育・研究のような収益性の低い基礎的なサービスを通じて、湿原のワイズユースに貢献している。
センターの活動をサポートする「霧多布湿原センター友の会」は、行政組織ではできない機動的な運営を持ち味としており、主として経済的な側面での活性化を担っている。いずれの組織も、活動対象は湿原の保全と活用を中心としながら、町内の産業や文化など多方面の地域資源とをうまく動員して活動を進めている。(下図参照)
[主体] 市民、農業者、商工業者、経済団体(協力=市)
[細施策] 同じような資源を持つ地域や、先進的な取り組みをしている地域を見に行ったり来てもらったりして、取り組みのヒントを得る
入込数の基準値を設定して、その成果や影響を毎年検証する
宮島沼や美唄市に強い関心を持つ観光客のデータベースを作り、旬の情報を定期的に提供する
観光客から得られた情報を集約・分析し、関係者にフィードバックする仕組みと、それを担う組織をつくる
市内にある資源を地域や内容別に束ねて、トレイル(散策ルート)を設定する
観光情報が集約されているセンター的な機能を持った場所をつくる
宮島沼のセンター施設(新設):宮島沼市内の他の資源の情報
交流拠点施設(計画中の温泉)、アルテピアッツァ:市内施設⇒宮島沼
↑上に戻る














B-2-2 [農業]都市住民の農村滞在の受け入れ
B-2-3 [農業]販路の安定確保
C-2-2 [観光]農業観光の展開
[背景] 食害によるマガンと農業者の対立構図を解決する方策の一つとして、農作物をマガンに食べられても、それをカバーすることができるような農業の展開が考えられる。
マガンと農業者との共生が、消費者によって支持されているような農業の展開は、地域ブランドの確立に役立つ。
農業環境が厳しさを増す中で、農業政策の転換や地域間競争の激化など将来発生する可能性がある経営リスク(危険)に対処するためには、今から将来の選択肢の幅を拡げる取り組みに着手しておく必要がある。
その一つの方策として、グリーン・ツーリズムがある。グリーン・ツーリズムとは、農産物をはじめ農村の持つ景観・文化・生活を核にして地域外からの来訪を促し、消費者との関係性を強めることによって、農業を活性化し基盤を強化しようという取り組みである。経済的な効果も見逃せないが、消費者との直接対話によって違った視点に触れることができ、農業の新しい価値やチャンスを見いだせることが重要である。
[現状] 消費者とのつながりが薄い。
将来、仮に農業政策が転換した場合に備えた対応を模索できていない。
宮島沼の拠点施設に出店し、観光客に農産品などを直接販売する動きが見られる。
[参考] 宮城県田尻町の蕪栗沼では、農業者・住民・NPO が一体となり、行政がバックアップしながら、マガンとの共生が進められている。冬季湛水水田や不耕起栽培を行うことでマガンの餌場を確保するとともに、グリーン・ツーリズムやエコ・ツーリズムを展開することよって、都市住民と蕪栗沼・農業者・NPO との関係をつくり上げている。農作物(主に米)は、マガンが食べることを安全性やおいしさのイメージとしてアピールし、来訪者や自然保護に関心を持つ都市住民に対して販売している。また、売り上げの一部を沼の保全に使用し、消費者も沼の保全の一端を担っている意識を持つような仕組みができている。
農業とマガンとの共生思想は、1996 年12 月の第12 回 雁のシンポジウムで確認された「蕪栗沼宣言」に明確に表現されている。(下図参照)
蕪栗沼とその周辺水田の湿地環境が,世界に誇れる宮城県田尻町の宝であることを認識
豊かな湿地環境を求めて飛来する渡り鳥ガンの国際的に重要でかつ国内最大の越冬地の一つであることを認識
湿地景観を維持することがガン類のみならず地元住民を含む人類全体に多大の恩恵をもたらすことを確認
水田の自然度を高める環境保全型農業を推進して水田がガン類にもより良い採食地となるよう努める
それを踏まえガン類と共生できる豊かな農業を目指すことが地の利を活かした持続可能な農業を保障することを確認
蕪栗沼とその周辺水田に生息する鳥類・動植物・魚貝類などの保護管理とその湿地景観保全を行うために
地域住民を含む様々な分野の人が参加して、その英知を具体化できる蕪栗沼と周辺水田の管理計画の策定を求め
蕪栗沼ラムサール準備委員会の設立も含め,蕪栗沼の価値を損なうことなく21 世紀の子孫へ引きつぐために,できる限りの努力をする
[主体] 農業者、農業団体(支援=市)
[細施策] 宮島沼へ来た観光客と農業者が接触する機会を増やす
消費者へ直接販売できる場の確保
生産現場での関わりの場をつくる(例:見学コース・作業体験、マガンによる食害も含めて農業の現状を理解してもらう)
農村や農業の可能性や魅力を見直してみる
他の事例の調査研究
地域資源の再確認(宮島沼への来訪者の声を参考にして)
宮島沼へ来た観光客が、農村に滞在することができるような環境をつくる
「農村で休暇を」というイメージ展開
滞在のための受け入れ体制の整備(例:ファームスティ)
⑥で作成するデータベースを活用して、農産物や農村の魅力を伝える
インターネットを活用した定期的な情報発信や相互交流
都市部での消費者との懇談会
農作物にマガンとの共生に必要なコストを追加しても買ってくれる消費者との関係をつくり、売上の一部をマガンとの共生のために役立てる
ファンクラブやNPO の育成と組織化
↑上に戻る














C-2-3 [観光]環境教育・環境観光の展開
D-3-1 [教育]学校教育のカリキュラム組み込み
D-3-2 [教育]社会教育プログラムの開発と展開
[背景] 宮島沼の自然を将来に引き継いでいくためには、自然と人との関わりの中から宮島沼の価値を体験的に認識することが効果的である。それは短期間では効果をあげにくく、長期にわたって取り組む必要があることから、教育にシステムとして組み込んで、息の長い成果を求めて着実に進む必要がある。
学校教育では、総合的な学習や、週休二日の導入によって、地域にある資源を活用しながら自ら学ぶ教育のソフトが求められている。社会教育でも、高齢化社会の中での生き甲斐創造にとって、学ぶということが重視されてきている。

宮島沼と教育とを結びつけるための有力な手だての一つに「環境教育」がある。環境教育とは、現在や将来の問題を解決するための知識・技能・態度・意欲・遂行力を持ち、人と自然、人と人など、自己と周囲の環境との関係を認識して、よりよい環境の創造のために行動できる能力や態度を育成する教育活動である。
[現状] 宮城県田尻町の蕪栗沼では、NPO(蕪栗ぬまっこくらぶ)と教育機関が連係して、学校教育で、自然体験(魚とり、水生昆虫探し、ガンの観察など)、調べ学習(インターネットなどを利用)などの環境教育を展開している。学校側のねらいは,これらの体験や学習を通して「ふるさと」や「自分の生き方」「国際社会とのつながり」などについて議論を進めていくことにある。蕪栗沼での環境教育の取り組みで特徴的な点は,学校の先生だけではまかないきれない専門的な部分を、NPO のメンバーがカバーしていることで、近隣2 小学校の蕪栗沼を題材とした総合的学習では、フィールドワークの講師としてNPO のメンバーが可能な限り協力している。また,NPO は大学と協力してフレンドシップ事業やインターンシップ事業、共同研究に取り組み、NPO と大学との新しい関わり方についても模索を続けている。
浜中町の霧多布湿原では、霧多布湿原センター友の会がエコツアーの中に環境教育の要素を組み入れている。木道のんびり散策、湿原と森 長靴トレッキング、冬の湿原 探検ツアーなど、いずれもガイドが同行した小旅行形式のもので、旅行を通じて自然のしくみや環境について何か学んだり、体験したり、気付いたりできるような内容になっている。同時に、ツアー収益の一部が湿原保全に使われることから、参加するだけで自然保護への一端を担うことができる仕組みになっている。
[参考] 学校教育や社会教育では、宮島沼周辺の一部の学校を除いて、宮島沼やマガンがほとんど取り上げられていない。
環境教育についてのノウハウ、支援体制ができていない。
[主体] 市民・NPO 、教育機関、市
[細施策] 学校教育・社会教育の中で、宮島沼やマガンを積極的に取り上げる
総合学習での取り組み
シンポジウムや講演会の開催
環境教育を実行・サポートするための体制を整備する(市民組織・活動拠点)
環境教育を担う指導者の育成
環境教育の手法を研究しノウハウを蓄積する
教材、パンフレットの作成
研究者の育成
来訪する観光客に対して環境教育の視点から働きかけを行い、観察マナーの向上を図る
案内板・解説板の設置
パンフレットの作成
環境学習ができる施設の整備


[背景] 試行錯誤を通じて蓄積されたノウハウは、他に真似できない地域資産として、美唄の将来のために活用できる。
[現状] 形の見えない仕組み・知識・ノウハウは、地域資産として認識されない。
[主体] 市民・NPO 、教育機関、市
[細施策] 蓄積した環境教育のノウハウを美唄市外で展開して、都市住民に対する自然保護への理解を訴える
各種メディアを通じた広報活動
市内イベントでのPR
マガン越冬地など関連する他地域と共同で環境教育のプログラムを展開する
マガン飛来地やラムサール登録地との定期的な交流
宮島沼周辺の河川、河跡湖、残存する美唄湿原、および防風林を教育の素材として活用し、マガンの飛来しない時期にも配慮した、通年での環境教育を実践する
↑上に戻る














D-1-1 [市民]毎年ガイドラインを検討
D-1-2 [市民]市民組織の結成と活動展開
[背景] いきなり市民組織の立ち上げはできない。関係者の対話と、意識の共有を図り、それが熟成された段階になるまでの助走期間が必要である。
関係者が一同に会して話し合う場を設定しても、話し合って決めなければならないタスクテーマを設定しなければ、単なる連絡会になってしまう恐れがある。
[現状] 関係者が一同に会して話し合う場がない。
市内の関係者だけでは顔ぶれや発想が固定されてしまっている。
[主体] 市民、農業者、経済団体、研究者、市(客観的な評価者として=学識経験者など市外の第三者)
[細施策] 毎年関係者が一同に集まって、情報を共有するとともに、当年の宮島沼についてのガイドライン(方針)を決定する
現状、課題、将来構想などについての情報共有
本計画の進捗状況のチェック
当年の方針の決定…入込数、受け入れ体制、自然環境と農業との関連、展開する施策内容と方法など
他地域の事例を見学し(または関係者を招き)、関係者が思いを共有できる基盤をつくる
次第に仲間を増やす努力を続ける


[背景] ガイドライン検討会議の活動が熟成してきたら、市民が主体となった活動がより展開できるように、宮島沼とマガンに関する網羅的な活動を展開するNPO など市民組織へとステップアップするチャンスである。
市民による活動の動機は、義務や危機感では長続きしない。活動そのものは大変だが、「楽しい」という意識が根底にないと、活動は長続きしない。
[現状] 主体的な市民活動への取り組みは顕在化していない。
[主体] 市民、農業者、経済団体、研究者、市
[細施策] 市民組織を結成し主体的に活動する
↑上に戻る














B-3-1 [農業]土地を買い上げて生産を委託
B-3-2 [農業]消費者との共同出資による農業生産
[背景] 宮島沼の環境保全は、周辺での農業の展開に大きく影響を受ける。最も大きな要因は、土地利用と沼の水質など環境、作物とマガンの餌との関係である。これらの関係は、現在の農業政策下での営農体制を前提にすると、恒久的なマガンとの共生策は限定的なものとならざるを得ない。
一方で、農業環境の経済的な厳しさが増しつつあることに加えて、就農者の高齢化が進んでいることもあって、周辺農業は大きな転換期を迎えている。
今回の計画策定は、自然と農業との関係から農業のあり方を見直し、従来とは全く異なった見地からの農業展開の可能性を、長期的な取り組み課題として意識しはじめるチャンスである。
その際には、宮島沼の保全と活用を進める過程で生じるであろう、市民や市外の応援団などの消費者や、環境に対する主体的な取り組みを通じた見えない価値資産が大きな力となる。
[現状] 新たな農業構造を研究する余裕がない。
[主体] 農業者、農業団体  (支援=市民・都市住民、市)
[細施策] 共同出資や委託生産など、自然との共生を糧に消費者とともに農業を維持発展させる仕組みを研究し模索する
↑上に戻る














A-2-3 [自然]石狩川との連続性の確保
A-2-4 [自然]他市町村と連携した石狩川水系全体の保全
[背景] 宮島沼には、国の天然記念物のオジロワシをはじめ希少種を含む多様な水鳥類や猛禽類の飛来が確認されている。多くの種が確認されている現状を発展させることによって、春秋に飛来が集中するマガンだけではなく、ほぼ通年にわたって水鳥が飛来する「水鳥ランド」の形成が可能である。
美唄湿原とそこに生息する動植物の保全と回復のためには、石狩川と宮島沼をはじめとする周辺湿地環境の連続性が確保されていることが望ましい。すなわち、多くの水辺が点在する石狩川流域での一体的な取り組みが不可欠である。
[現状] 宮島沼と石狩川との間には連続性はない。
石狩川流域での一体的な取り組みは見られない。
[事例] オランダのFlevoland では、工業団地としての開発を進めていた土地を転換し、ガン類を受け入れる湿地としての保全を進めている。分断された保護地域をつなぎ、動物の移動経路の確保や生態系と生態系を結びつけるというコリドー(自然回廊)の構想が実践されている。
●現 在
●将 来
オランダでの水鳥ランド形成に向けた構想
[主体] 市(支援=研究者・市民団体)
[細施策] 石狩川の堤防改修が行われる際に、宮島沼と石狩川との連続性に配慮した空間形成に配慮するよう関係機関に要望し実現を目指す
石狩川流域での一体的な取り組みを展開する素地となる話し合いや、ゆるやかな組織を、関係市町村に提案する
↑上に戻る
目次に戻る