高圧線に接触したマガンの応急救護とリハビリ

▼ 強風の影響!?高圧線接触事故が続発!

今年の春、例年になく風が強い日々が続き(注1)、マガンの生活にも大きな影響を与えました。通常、マガンは朝夕の採食時間を挟んで日中は宮島沼で休息します。ところが、今年はほとんどのマガンが日中を沼では過ごさず、採食地の田んぼや麦畑で過ごしていました。この一因として、マガンが、強風時に浪費しやすい、沼まで往復するためのエネルギーを節約したという理由が考えられます。

春の強風は、また別な形でマガンに襲いかかりました。高圧線に接触するマガンが続出したのです。接触事故は、半径百数十メートル内の狭い範囲で、数日間のうちに連続したので、強風だけがその要因とは言えませんが、強風が事故を誘発したことは十分考えられます。

高圧線に接触したと思われるマガンは少なくとも6羽。そのうち1羽は現在も生きていて、野生復帰に向けたリハビリをしています。今回のトピックスでは、このマガンの応急救護とリハビリに関わる記録をご紹介します。

(注1)気象庁のデータによると、今年4月の平均風速は3.1(㍍/秒)で、平年値の2.3(㍍/秒)を大幅に上まりました。

▼ マガンの応急救護

◆ 収容
マガンは脚部に異常があり、正常に座ることができなったので、段ボールのなかにタオルで円形の台座を作ってやり、収容しました。円形の台座は体重をうまく分散し、胸部などの圧迫を防ぐためにも有効ですし、段ボールは保温性があり、視界を塞ぐことで安静を保てるため、収容には適しています。また、マガンが衰弱していたので、夜間は体温の低下を防ぐために、ペットボトルの湯たんぽ(40℃)を段ボールにいれました。

◆ 補液
マガンは保護されてからだいぶ時間が経過しており、事故による衝撃などからも脱水症状が心配されたので、水分補給を行いました。まずは、ポカリスウェットを2倍に薄めた液を少し暖めたものを、スポイトで嘴の端にたらして補液しました。その後、収容環境にある程度慣れるのを待って、専用カテーテルを用いて体重の5%を目安としたポカリスウェット希釈液を強制的に補液しました。

▼ マガンのリハビリ経過

◆ 検査
その後の検査の結果、脚部の異常は頭部と腰椎を強打したことによる神経症状であることがわかりました。レントゲン検査から皮下に鉛散弾らしきものも見つかりましたが、血液検査の結果は鉛濃度、腎臓、肝臓の異常はありませんでした。また、保護時に左目に異常があり、視力もないようでしたが、それは事故以前からの障害のようです。

◆ 洗浄・強制給餌など
傷病鳥を保護したとき、最も大変な作業になるのが野生復帰に向けたリハビリです。マガンは衰弱状態を脱したものの、自力で立ち上がることはできず、食物も自主的に取ろうとはしませんでした。そこで、流動食を強制給餌して脚部の回復の様子を見ることになりました。その後、徐々に脚力の回復が見られたので、羽毛の汚れを落とし、水に浮かべて水上生活を送れるかどうかの様子を見る作業を行っています。

洗浄前は羽毛が水をはじかない状態 羽毛に洗浄液をしみ込ませるように洗う
洗浄液が残らないように充分にすすぐ 乾燥させると羽毛がふかふかに
しばらく休ませて強制給餌 野外で回復具合の様子を見る

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