● 水鳥に餌をあげないで!
小さなお子さんがお菓子の袋を抱えてハクチョウなどにあげている光景は、一見ほのぼのとしていいものです。しか-し、ちょっとまってください。宮島沼では、水鳥に餌を与えないように呼びかけています。全国の水鳥の渡来地でも、最近は餌やりの禁止を呼びかける場所が多くなってきました。しかし、水鳥に餌を与えることを楽しみにしていらっしゃる方も多いはず。。。今回のトピックスでは水鳥への餌やり禁止の意味について考えます。

● 餌やりが水鳥や他のいきものに与える影響
宮島沼の水鳥はペットではなく、「野生動物」です。本当は優しい気持ちからでも、野生動物に餌を与えると、時としてとんでもないことになることはサルやキツネ、クマなどでは良く知られています。調子に乗ったサルが人から食べものを奪い取る。自ら餌を探さなくなったキツネが「観光ギツネ」になりさがる。ゴミに餌付いたクマがキャンパーを襲う。このような光景をテレビで見たことがあると思います。同じように水鳥も、餌やりによってダメになるケースが大いに考えられます。ふたつのケースを元に考えてみましょう。
野生のキツネは警戒心が強い
  ケース1:餌をあげている野鳥への影響
餌を与えることで、野鳥の分布や渡りなどの行動が変化してしまうことがあります。例えば、ドイツで繁殖するズグロムシクイは、もともと冬には西アジア方面に渡っていたのですが、近年、野鳥愛好家の餌台の影響でイギリスやアイルランド方面に渡る個体が増えたといいます。身近なところでは、給餌に頼って南下しなくなった個体もいるといわれる、道内で越冬するハクチョウがいます。また、お菓子やパンなどの人工的な食べものが水鳥の健康状態を悪くする恐れもあります。
物欲しげなオオハクチョウ
  ケース2:野鳥をとりまく生態系への影響
ある野鳥だけに餌をあげていると、他の鳥やいきものがとんだとばっちりを受けることがあります。例えば、オオセグロカモメは観光客の給餌や生ごみに餌付きますが、一部地域で増加した結果、ウミガラスやケイマフリなどの稀少な鳥の卵や雛を捕食して問題になっています。また、北米ではハクガンが急増した結果、再生力の弱い繁殖地の極地植生を食べ荒らし、同じ環境で繁殖するシギやカモ類の繁殖まで阻害しています。良く餌付くハクチョウやオナガガモだけをひいきすると、他の生き物に思わぬ影響が出てくるかもしれません。
観光客から餌をもらうカモメ

● 餌やりが環境に与える影響
餌やりは、水鳥が生活する環境にも悪影響を及ぼします。宮島沼は昔、植物の分解が進みにくい「泥炭湿地」に発達した貧栄養湖でした。湧水もあって、水は透明であったようです。しかし、周囲の畑地化とともに湧水はなくなり、水が濁り始めました。流入水を農業排水と雨水にしか頼ることができない今、宮島沼は富栄養化してしまっています。特に、夏場、突堤付近にアオコの発生が目立ちます。これは、食べ残しの餌や過剰に集まるハクチョウやカモ類の排泄物の影響であると考えられます。
突堤付近で発生するアオコ

● 宮島沼でも。。。
以上、餌付けが水鳥の分布や行動、更には水鳥が暮らす環境や他のいきものに悪い影響を及ぼすことがある事を紹介しました。宮島沼でも、給餌に依存してしまった一部のハクチョウの渡りや採食行動が変化してしまっていると考えられます。また、給餌に依存するハクチョウやカモが過度に集中すると、伝染病などによる大量死のリスクが高まるなどの問題もあります。さらには、餌やりが宮島沼の水質環境を変化させていることで、そこに棲む魚や植物も影響を受けていることでしょう。
餌に群がるオナガガモ

● かわいい子には旅させよ!!
ハクチョウへの給餌を禁止した渡来地では、ハクチョウの行動が変わったと聞きました。それまで湖に張り付いて餌をくれるのを待っていたハクチョウが、自ら餌を探し始めたそうです。ハクチョウもやろうと思えば自分で餌を見つけられるのですね。餌を与えない代わりに、できるだけ自然に餌探しができるような場所を確保してあげて、陰ながら見守る。これが本当のやさしさではないでしょうか?
田んぼで餌を探すハクチョウ
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