長い冬が終わり、春の訪れを告げるマガンの飛来。その飛来時期、つまり宮島沼でのマガンの見頃は、毎年異なります。記念すべき第一回目の「トピックス」では、今年のマガンの飛来時期を大胆に予想してしまいます。

「沼開け」とマガンの飛来
 冬、宮島沼は氷に覆われています。沼全面の氷が溶けてなくなる日を、「沼開け日」といいます。沼が氷で覆われていると、キツネなどの天敵が氷の上を近づいてくる恐れがあるため、マガンは安心して沼で休むことができません。沼が開け始めると、マガンは安心して沼で休むことができるようになるため、その数が急増します(下図)。
注:実際には「沼開け日」の10日ほど前に沼の何割かが先に開け、マガンが宮島沼でねぐらをとるようになります。その後、「沼開け日」をむかえると、さらにマガンの数が増えるということになります。



「沼開け」と雪解け
 「沼開け」は、周囲の雪解けの状況とほぼ同調します。雪解けは、冬の積雪量、そして春の気象条件に依存してそうです。例えば、2002年と2000年の雪解け状況を比べてみますと、3月の時点ではそれほど積雪量に開きはありませんが、2002年はその後に一気に雪解けが進み、沼開けも早くなりました。2002年と2000年の4月の平均気温と日照時間を比べてみますと、それぞれ、8.5°と4.3°(平均5.2°)、198時間と132時間(平均156.2時間)となり、たしかに春の気象条件が雪解けの時期を左右してそうです。
注:気象に関するデータは、気象庁のホームページより引用しています。



で、マガンの飛来時期は?
 今までの話を整理しますと、マガンの飛来時期は「沼開け」に、「沼開け」は冬の積雪量と春の気象条件によって決まる、ということになります。現時点でマガンの飛来を予測する材料は、いままでの積雪量しかありません。この先の予想をするためには、まず気象予報士の資格をとって。。。という結論ではあまりにも申し訳ないので、精一杯の分析をさせてもらいます。
 今冬の積雪の状況ですが、「例年になく少ない!」という現状です。このような状態の年は、過去に1989年と1990年があげられ、その年の沼開け日は、それぞれ、3月28日と29日でした。今年も同様に沼が開けると仮定すると、ズバリ、「マガンは3月20日頃から宮島沼でねぐらをとるようになり、4月はじめにはその数が急増する」、と予想できます。

マガンの飛来予想のもう一つの意味
 マガンの飛来予想は、マガンの観察を楽しみにしてくださっている多くの方々へのお問い合わせに応じるためにも重要ですが、実は、地域の農家が直面している「小麦食害」に対応するためにも用いることができます。
 普段マガンは田んぼの落ちモミを食べますが、春の終わりには落ちモミが少なくなり、代わりに生長途中の小麦の葉を食べ始めます。落ちモミの減少はマガンの採食によってもたらされるため、たくさんのマガンがはやく飛来すると、それだけ落ちモミの減少もはやくなります。また、(上述したように)マガンの飛来が早い年は雪解けもはやいため、農家ははやめに田んぼを起こし、その結果、落ちモミが土中に埋まってしまいます。つまり、マガンの飛来が早い年は落ちモミの減少も早く、小麦食害が早い時期から発生し、長期間続く可能性が高い、ということになります。もちろん、マガンによる小麦食害は、マガンの飛来時期だけで説明できてしまうほど単純なものではないのですが、一つの重要な指針になることは確かです。
 食害が発生する時期を予想する事により、事前に対策をとることができ、その被害を最小限におさえることも可能です。マガンの飛来予想はその重要な要素であり、今後もデータを積み重ね、詳細な分析を進めることによって、その精度を高めていくことを考えています。
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